いもち病

いもち病は稲を主に襲う真菌性の病気で、葉や茎に茶色の斑点を生じ、最終的に枯死させます。過湿や高湿度の環境で発生しやすく、放置すれば収穫量の大幅な減少を招きます。

症状

いもち病の初期症状は目立ちにくいものの、進行すると稲全体を侵します。

葉の斑点

初期段階では、葉に水浸状の小さな斑点が現れます。これが時間とともに拡大し、縁が暗褐色、中央が灰白色の特徴的な病斑になります。

茎の腐敗

病気が茎に進行すると、茎内部が腐敗し、植物全体が倒伏することがあります。

穂枯れ

出穂後に感染すると、穂が黒くなり乾燥するため、収穫量が著しく低下します。

いもち病は他の病害と混同されやすいため、斑点の形状や広がり具合を確認することが重要です。

起きやすい原因

起きやすい環境

過湿

水田の排水が悪い場合や長雨が続くと、いもち病の発生リスクが高まります。特に梅雨や台風シーズンは要注意です。

密植

稲が密集していると通気性が悪化し、病原菌が繁殖しやすくなります。

肥料の過多

窒素肥料の過剰使用は植物を弱らせ、病気に対する耐性を低下させます。

起きやすい季節

梅雨~夏季

高湿度と温暖な気候が病原菌の繁殖を促進します。

台風後

雨風による水田の水浸し状態が、病気を広げる原因となります。

対処方法

環境を変える

適切な水管理

水田の排水を良くし、過湿状態を防ぎます。特に梅雨時期や長雨後は迅速に水を抜くことが重要です。

植え付けの間隔調整

稲の間隔を適切に空けて、通気性を確保します。

窒素肥料の適量使用

過剰施肥を避け、稲が病害に対抗できる体力を維持します。

生存率

症状
軽度(生存率 80%)

初期段階で葉の一部に斑点が出た場合、迅速な対処で被害を抑えられます。

症状
中度(生存率 50%)

茎に腐敗が始まり、葉全体に病斑が広がると収穫量の半減が見込まれます。

症状
重度(生存率 30%)

穂枯れが進行し、稲が倒伏する段階ではほとんどの収穫が不可能になります。

薬剤名

ベンレート

広範囲の真菌に効果的で、特にいもち病の初期段階で使用が推奨されます。

イプロベンホス

いもち病専用の薬剤で、病斑拡大を防ぎます。

トリフロキシストロビン

新しい世代の薬剤で、葉や茎、穂への広範囲の防除効果があります。

感染しやすい品種

コシヒカリ

高品質な反面、病害に弱い傾向があります。

ひとめぼれ

密植されやすいため、湿度が高まると感染リスクが上昇します。

あきたこまち

冷涼地向け品種ながら、過湿環境では感染しやすいです。

まとめ

いもち病は稲作において最も被害が大きい病害の一つです。過湿や密植、過剰施肥などが主な原因となり、葉や茎、穂に特徴的な症状を引き起こします。適切な水管理や薬剤使用、そして品種選びが防除のカギとなります。特に梅雨や台風後には注意を払い、早期発見と対処を心がけましょう。

いもち病についてのQ&A

いもち病とは何ですか?

いもち病は稲を主に襲う真菌性の病気で、Pyricularia oryzae(ピリキュラリア菌)によって引き起こされます。葉や茎、穂に斑点を形成し、深刻な場合には稲の枯死や収穫量の大幅な減少を引き起こします。

症状の特徴は何ですか?

初期には水浸状の小斑点が現れ、次第に茶色の縁を持つ灰白色の楕円形の斑点になります。茎が腐ると倒伏する可能性があり、穂に感染すると枯れて収穫できなくなります。

なぜ「いもち病」という名前なのですか?

病気が進行した稲の様子が「いぼち」(腫れ物)に似ていることから、この名前がついたと言われています。

いもち病はどのように広がりますか?

病原菌の胞子が風や雨によって拡散されます。また、感染した稲わらや籾を通じて翌年の稲に再感染する可能性があります。

発生しやすい環境は?

高湿度や過湿の環境が最適です。梅雨や台風シーズンに多く発生し、窒素肥料を過剰に使用した場合や密植した場合にもリスクが高まります。

いもち病を防ぐための豆知識は?

窒素肥料は控えめに

肥料過多は植物を弱らせ、病気に対する抵抗力を低下させます。

輪作を取り入れる

同じ水田で稲を連続して栽培すると病原菌が蓄積されるため、他作物との輪作が効果的です。

抵抗性品種を選ぶ

近年では、いもち病に強い品種が開発されています。

いもち病に感染した稲の収穫量はどれくらい減りますか?

感染状況によりますが、軽度では収穫量の減少は約10~20%です。重度になると収穫がほぼ不可能になる場合もあります。

稲の他に感染しやすい作物はありますか?

いもち病は稲だけではなく、小麦やオオムギなどの穀物にも感染することがあるため、農業全体に影響を与える可能性があります。また、病原菌は約5年以上土壌中で生存できるため、継続的な防除が必要です。

いもち病の治療にはどのような薬剤が使えますか?

主に「ベンレート」や「イプロベンホス」などの殺菌剤が使用されます。発病初期に散布することで症状の拡大を防ぐ効果があります。

人への影響はありますか?

いもち病の病原菌は植物に特異的であり、人には感染しません。ただし、食物生産に与える影響が間接的に人々の生活を脅かします。

まとめ

いもち病は稲作において深刻な被害をもたらす病気です。高湿度や窒素過多が主な原因であり、風や雨を通じて簡単に広がります。

早期発見と適切な防除が収穫量を守るカギです。また、輪作や抵抗性品種の導入などの予防策を積極的に取り入れることで、発生リスクを大幅に低減できます。

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