ハダニ

ハダニは、植物の葉の裏や茎に寄生し、植物の栄養を吸い取る害虫です。これにより、葉が黄変し、植物全体の生育が悪化します。適切な防除策と管理を行わなければ、植物の健康が大きく損なわれる恐れがあります。

症状

ハダニ(Spider Mites)が植物に寄生すると、以下のような症状が見られます。

葉の変色

初期症状として、葉に細かい斑点が現れ、次第に全体が黄色くなります。重度になると、葉が枯れて落ちることもあります。

葉のしなびた状態

葉がしおれたり、植物全体が元気を失うことがある。

クモの巣状の糸

葉の裏や茎にクモの巣のような細い糸が見られることがあります。これはハダニが出す糸で、繁殖が進むとよく見られます。

この症状を見分けるポイントは、葉の変色が斑点状であること、葉の裏側をよく観察すると小さな動く虫が確認できることです。

起きやすい原因

起きやすい環境

ハダニは特に乾燥した環境を好みます。湿度が低く、風通しの悪い場所で発生しやすく、室内の観葉植物や温室での栽培では注意が必要です。

乾燥した環境

湿度が低いとハダニが活発になり、増殖が速くなります。

通気不足

通気が悪い環境では、ハダニが居心地よく増殖します。

肥料不足

栄養不足の植物はストレスを感じやすく、ハダニなどの害虫に対して抵抗力が弱まります。

起きやすい季節

ハダニは温暖で乾燥した環境を好むため、特にからにかけて活発に活動します。

夏場は乾燥が激しくなるため、ハダニの増殖が顕著になります。冬でも暖房の効いた室内では発生する可能性があるので注意が必要です。

対処方法

環境を変える

ハダニの対策には、湿度を適切に保ち、風通しを良くすることが重要です。

加湿

定期的に葉の表裏に水をスプレーすることで、湿度を高めてハダニの発生を抑制できます。

通気性を確保

植物の周りの空気の循環を良くするため、窓を開けたりサーキュレーターや扇風機を使って風を通すと効果的です。

葉の清掃

葉をぬるま湯で拭き取り、ハダニを物理的に除去することも有効です。

生存率

早期にハダニを駆除すれば、植物の回復は比較的高い確率で可能です。

症状
軽度(生存率 90%)

初期段階で対処した場合。

症状
中度(生存率 70%)

葉に広範囲に斑点が見られるが、まだ落葉が進んでいない場合。

症状
重度(生存率 40%)

多くの葉が黄変し、茎にまで影響が出ている場合。

薬剤名

ハダニに効果的な殺虫剤を使用することも有効です。

マラソン

長期的な効果があり、葉や茎に浸透してハダニを駆除します。

ダニ太郎
  • 特徴: ハダニ専用の駆除剤。有用昆虫や天敵への影響が少ない環境や人に優しい点が特徴。
  • 作用: 接触性で、ハダニの成虫や卵に対して直接的な効果を発揮します。
  • 適用場面: 農薬を避けたい有機栽培や家庭菜園での使用に向いています。
バロックフロアブル剤
  • 特徴: ハダニに特化した化学農薬で、主に成長を抑制して駆除する作用を持ちます。
  • 作用: 成虫だけでなく卵や幼虫にも効果を発揮する成長阻害型の薬剤。作用が持続しやすいのが特徴。
  • 適用場面: 大規模農場や長期間にわたるハダニ管理に適しています。
殺虫・殺ダニ剤 粘着くん液剤
  • 特徴: 化学薬品を使わず、物理的な作用でハダニを駆除する粘着剤。
  • 作用: ハダニの体表を覆って呼吸を妨げたり、動きを制限することで駆除します。
  • 適用場面: 化学農薬を使用できない場合や、有機栽培にも使用可能。安全性が高い反面、対象をしっかり覆う必要があるため散布方法に注意が必要です。
スターマイトフロアブル
  • 特徴: 高い殺ダニ効果を持つ化学農薬で、耐性がつきにくい薬剤。
  • 作用: ハダニの成虫や幼虫、さらには卵にも効果を発揮し、速効性と持続性があります。
  • 適用場面: 他の薬剤と組み合わせてローテーションに取り入れることで、耐性発生を抑えながら効果的な管理が可能。
消泡性展着剤 グラミンS

展着剤の代表として「ダイン」がありますが、通販では購入しづらい(Amazonでは業者によるセット売りや値段釣り上げ、Amazon公式でも最低個数購入が設けられている)ため、同じ作用がある「消泡性展着剤 グラミンS」がオススメです。相場は大体400〜450円くらいです。「ダイン」を購入する際は通販ではなく、お近くの園芸店での購入をおすすめします。

薬剤ローテーションとは

薬剤ローテーションとは、複数の薬剤を定期的に切り替えて使用する管理方法です。異なる作用機序(薬剤の効き方)を持つ薬剤を組み合わせることで、対象となる害虫や病原菌に対する耐性の発生を抑えることが目的です。

なぜローテーションが必要か

耐性の発生を防ぐため

同じ薬剤を繰り返し使用すると、ハダニなどの害虫がその薬剤に対して耐性を持つ可能性が高まります。一度耐性がついた害虫には、その薬剤が効かなくなるため、対策が困難になります。

作用範囲の拡大

ある薬剤では効果が薄い発育段階(卵、幼虫、成虫)や個体に対して、別の薬剤を使うことで、すべての段階で効果を発揮できます。

農薬使用のリスクを分散

環境への影響や残留農薬のリスクを軽減できます。作用機序や成分が異なる薬剤を使用することで、環境への負担を分散することが可能です。

薬剤ローテーションの例

STEP
初期(発生直後)

粘着くん液剤ダニ太郎などの物理的な薬剤で最初の駆除。

STEP
中期(発生拡大時)

スターマイトフロアブルなどの化学農薬で、成虫から卵まで幅広く対処。

STEP
後期(耐性予防)

バロックフロアブル剤のような成長阻害型で残存個体を管理。

注意点

同じ作用機序の薬剤を繰り返し使わない

使用前に薬剤のラベルや作用機序を確認してください。

正しい散布タイミング

ハダニは短期間で繁殖するため、繁殖サイクルに合わせた散布計画を立てる必要があります。

環境負荷への配慮

使用量や使用方法を守り、散布場所周辺の植物や昆虫に配慮することが重要です。

薬剤ローテーションを適切に実施することで、効果的なハダニ管理が可能となります。

スプレータイプの方が簡単に駆除できると思います。3つのスプレータイプの駆除剤をローテーションで試しましたが、駆除しきれず、ミニバラが全滅した苦い経緯があるので、ここではハダニ専用の駆除剤を紹介しています。

被害に遭いやすい品種一覧

ハダニは多くの植物に被害を与えますが、特に以下のような品種・植物は被害に遭いやすいとされています。これらの植物は葉が柔らかい、乾燥した環境を好む、または日光を多く受ける特性があるため、ハダニの発生が助長されやすいです。

観葉植物

  • ベンジャミン(フィカス・ベンジャミナ)
  • モンステラ
  • シェフレラ(カポック)
  • パキラ
  • アグラオネマ
  • ドラセナ
  • ポトス

花卉類

  • バラ
  • ゼラニウム
  • カーネーション
  • シクラメン
  • ペチュニア
  • ガーベラ
  • インパチェンス

野菜類

  • キュウリ
  • ナス
  • トマト
  • ピーマン
  • イチゴ

果樹類

  • カンキツ類(ミカン、ユズなど)
  • ブドウ
  • リンゴ
  • ナシ

多肉植物・サボテン

  • アガベ
  • エケベリア
  • ハオルチア
  • セダム

その他の植物

  • ツツジ
  • サツキ
  • ヒイラギナンテン
  • ツバキ
  • スイカズラ科植物

被害に遭いやすい理由

乾燥を好む環境

室内の乾燥した空気や雨が少ない季節に発生しやすい。

密集した葉

風通しが悪い環境がハダニの温床となる。

新芽や柔らかい葉

新芽は栄養豊富で、ハダニの餌食になりやすい。

ハダニ被害を防ぐためには、定期的な葉水や湿度管理、風通しの確保が効果的です。これらの品種を育てる際は、特に注意しましょう。

ハダニに対するQ&A

ハダニとは何ですか?

ハダニは植物に寄生する小さな虫で、特に葉の裏側に生息します。植物から養分を吸収し、葉の変色や枯死を引き起こします。

ハダニの症状はどのように現れますか?

葉に細かい白や黄色の斑点が現れ、葉全体が黄変することがあります。重度になると葉がしなび、クモの巣状の糸が見られることがあります。

ハダニはどんな環境で発生しやすいですか?

乾燥した環境や通気が悪い場所で発生しやすいです。特に室内で暖房を使用している冬季や、湿度が低い夏場は注意が必要です。

ハダニの対策方法は?

葉の裏を水で洗い流すことで物理的に除去できます。また、湿度を保つことや定期的に水をスプレーすることで発生を抑制できます。薬剤を使用する場合は、アクタラやマラソンなどの殺虫剤が効果的です。

ハダニを防ぐための予防策は?

定期的に葉をチェックし、乾燥を防ぐために周囲の湿度を適切に保つことが大切です。

まとめ

ハダニは乾燥した環境を好み、特に春から秋にかけて発生しやすい害虫です。

早期に発見し、適切な湿度管理や薬剤使用を行うことで、植物の健康を守ることができます。

予防には、葉の定期的な観察と清掃が重要です。適切なケアで植物の健全な成長を維持しましょう。

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